「おじさんの壁」を超えよ!性のタブーに切りこむ”フェムテック”が注目される理由
フェムテック(FemTech)とは、セクシャルウェルネス、生理、更年期、妊娠・出産、不妊など女性特有の問題をテクノロジーの力で解決を目指した製品やサービスのこと。月経カップに生理パッドのいらない吸収ショーツに始まり、女性向けセルフプレジャーグッズ、排卵トラック機能付きのスマホアプリまでパーソナルな領域を扱う。
歴史的に性を語ることはタブー視されてきた。特に女性に関わる性は穢れた存在だと卑下され、月経不浄視や月経禁忌と悪しき慣習が続いてきた(一部の国で、性差別は根強く残る)。
真の男女平等社会の実現には性差別だけでなく、無意識レベルでの偏見や不平等を自覚し是正しなければならない。こうして男性社会からの脱却を図るべく、近年フェムテック市場が注目されるようになった。
◎フェムテック=社会全体の資産
2021年に発表されたグローバル・ジェンダー指数※1によると、日本は121位/153位と主要先進国の中でも最下位レベル。少子高齢化で労働力不足が懸念される中、ジェンダー平等や女性の社会進出をサポートする制度や取り組みが喫緊の課題だ。
また企業経営の観点から見ると、健康経営への取り組みで最も関心が高い項目が「女性特有の健康問題(56%/複数選択可能)」である。※2健康経営とは、従業員の健康管理を経営的にとらえ、戦略的にとりくむ経営手法である。女性の社会進出にともない、女性特有の健康問題へ配慮することで、企業の価値向上やステークホルダーからの信頼性アップにつなげる意図がある。
同報告書によると、月経随伴症状による労働損失は4,911億円と試算される。これは、PMS(月経前症候群)や更年期、妊娠・出産、女性特有の疾病が原因で、キャリアチャンスの喪失や長期的な人材確保が困難になることを意味する。すなわち、女性のヘルス課題に本気で取り組まない企業は損失を被る可能性があるのだ。
具体的には「フェムテックに関心を寄せる」「男性中心だった社会構造や制度の見直し」、「男性や管理職が女性の健康課題についてリテラシーを身につける」などの方法が有用に。一方の当事者である女性自身も性に対する基本知識を習得するなど両軸で進める必要がある。
◎性を学ぶ権利=リプロダクティブ・ヘルスライツ
世界に目を移すと、幼少期からの包括的性教育がグローバル・スタンダードだ。日本でも令和3年から「生命(いのち)の安全教育」が開始するなど、日本の性教育事情も変容しつつある。ダイバーシティ教育(多様性)の一環として、LGBTQ(性的マイノリティ)へ配慮も忘れず、性差ギャップ解消に向けた話し合いや学びの場が重要だ。両親や親友など親しい間柄でも話しづらいトピックと向き合うには、差別や偏見に屈しない心理的安全性を高めることも忘れてはならない。
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